コーア・クリント - いい贈り物

コーア・クリント（1888-1954 デンマーク)

デンマークを代表する革新的な建築家を父に持ち、幼少期からデザインや建築に触れる。

クリントは14歳頃から家具職人として父親をはじめ、カール・ピーターセンや家具作家、ヨハン・ローデのもとで学ぶ。計測に裏付けられたデータや数字に基づく機能主義を唱えたことで知られる。また「リ・デザイン」を提唱。過去の歴史・様式を見直し、それを時代の需要にあうよう再構築することを信念とし、教育を通じ多くのデザイナーに多大なる影響をあたえた、デンマーク家具デザイン界の巨匠。

デニッシュデザインの父として多くのデザイナーに影響を与える。画期的なデザイン教育ばかりでなく、1914年のフォーボーチェア、1933年のサファリチェアをはじめとする機能主義、デザインの模範となる数々の名作を残す。1929年のバルセロナ万博のデンマークパビリオンの監修も手がける。

クリントの機能と美への関心は早くから始まり、1924年に王立芸術アカデミーに家具科を創設。1940年代に始まるデニッシュモダンの黄金期を支えるウェグナーやモーエンス・コッホ、アルネ・ヤコブセン、ポールヘニングセンなどに大きな影響を与える。

コーアクリントはデザインの歴史、実用的な昨日研究をとおして建築や家具デザインの基本となる概念を教育。

様式を重視したそれまでの建築や家具デザインの手法を大きく改革。機能主義の先駆者として、比率を重視。人体各部のサイズやそれを考慮した家具の機能性を追及。製品に求められる機能を優先するデザイン手法をデンマーク家具デザイン界に広めていく。クリントは生涯を通じ、明確でロジカルなデザインを信条とし、最良の素材と秀逸なクラフトマンシップで製作されるシンプルな家具を追及。

プロポーションと空間の把握。コーア・クリントの抜きん出た才能の一つ。使用する人を最優先することを唱えた最初のデザイナーの一人。人間の体や動きを入念に検討しデザインされている。使用する人をデザインの基本とすることから「人間のためのデザイン」と評される。

芸術アカデミーでは生徒達に画期的な教育を実施。暮らしに使われている道具を計測させ、人々がどのような機能をもとめているか調査させた。この調査の目的は家具が、空間を支配するものではないということを啓蒙するためであった。これらの調査結果を元にクリントと生徒たちは、フォルムと機能が同等に考慮された家具を作り出していった。

クリントのデザインの大きな特徴は素材とフォルムのバランスだけではなく、家具と空間の調和にもこだわりが見られる。シンプルなフォルム、質の高い機能性、時代を超えて通用するデザイン。妥協の無い素材と製造工程など。

代表作

ファーボーチェア

ファーボーチェア

1913年から15年にかけてカール・ペーターセンとコーア・クリントによって設計されたファーボー美術館のためにクリント自身がデザインした椅子。軽量で持ち運びを容易にし、展示品の前に椅子を持っていって鑑賞できるような機能を重視したデザイン。美しい床のタイルを邪魔しないようにオリジナルは座面も籐張りだったとか。

サファリチェア

サファリチェア

1933年米国の映画作家や婦人がアフリカのサファリで使用していた組み立て式の椅子にインスピレーションを得てデザイン。携帯用の椅子をモダンな空間に合う優雅な椅子にリデザイン。

英国軍で使用されていたインディアン・ロッキーチェアがもと。世界最初の組み立て式の椅子と言われている。

RED CHAIR

バルセロナチェア

1927年コペンハーゲン市内、デンマーク工芸博物館の講義室用にデザイン。オリジナルにクリントが好んで使用していた赤色のゴートハイド（山羊革）を使用していたことから、レッドチェアと呼ばれる。ただバルセロナ万国博覧会にて賞を受賞したことから「バルセロナチェア」とも呼ばれる。RED CHAIRは18世紀のイギリスのデザイナー「トーマス＝チッペンデール」のチェアをリ・デザインしたと言われている。チッペンデール様式とも言われる、ロココ様式に中国的な装飾やゴシック様式を取り入れたスタイル。木を削る事で装飾をつくり、猫脚のような微妙な曲線を脚部に取り入れたチッペンデールのチェアは18世紀のフランスやイギリスを代表する家具と言われている。

RED CHAIRにもこのチッペンデール様式が細部に残されている。横から見ると後ろ脚に猫脚のような曲線がある。この曲線はフォーボーチェアやイングリッシュチェアにも採用されている。エッジの部分に真鍮製の鋲で打ち込む装飾もチッペンデールチェアでは多く見られる。鋲を打ち込むことでよりクラシックで落ち着いた印象になる。

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